映画『ひとりたび』で主人公・美咲の初恋相手、荻野圭一の中学時代を演じた岩田奏さん。自身も中学3年生で撮影に臨み、役柄と重なる部分を感じ、感覚を共感しながら自然体で演じた作品だとか。過去の記憶や誰かを思う気持ちを丁寧に描いた本作について、「昔の思い出を大切にしていていいと肯定してくれる作品」と語る岩田さんに、作品を通して感じた青春の尊さや記憶との向き合い方、そして今も大切にしているモノについて話を聞きました。
□予告動画
https://www.youtube.com/watch?=WBJ8kKB3TD4&t=7s
「昔の気持ちを大切にしていていい」――作品が教えてくれた記憶との向き合い方
――作品に出演するというお話を伺ったときの気持ちから教えてください。
まずはすごく嬉しかったです。 お話をいただいて、撮影したのが3年前ぐらいで、中学 3年生のときでした。僕にとってまだ2本目の映画出演ということで不安もありましたし、緊張もしました。実際に撮影の現場はすごく温かくて、見守っていただいている感じで、すごく楽しかったという印象です。
――完成した作品をご覧になったときの印象をお聞かせください。
まず驚いたのは、作品全体に流れる空気感でした。会話がすごくゆったりと進んでいくんです。たとえば主人公の美咲が中学生のころ、友達と3人でファミレスにいるシーンを見て、「本当に仲が良い人たちといると、大げさに盛り上がらないこともあるよな」と思ったりして。本当に日常の延長線上にあるような会話が続いていく。リアルな距離感が丁寧に描かれていて、その自然さがとても印象的で、すごく好きでした。
他には特に印象に残っているのが、大人になった美咲が雨の降る車の中で、迎えに来てくれた康介に圭一のことが「好きだった」と気持ちを伝える場面です。中学時代から20年近く経っても、気持ちや思い出を大切に持ち続けていていいんだと、この映画は肯定してくれている気がしたんです。
――人への思いだったり、過去の記憶だったりを大切に持ち続けていていいんだというメッセージを感じたんですか?
そうですね。たとえ中学時代の短い時間だったとしても、自分にとって大切な思い出なら、ずっと記憶として持っていていいんだと思いました。美咲も大人になってから過去を振り返る中で、「やっぱりあの頃好きだったんだな」とか、「もう一度会いたいな」と気持ちがよみがえってくる。そういう感情ってすごく素敵だなと思います。
――ご自身もこれからそういう経験を重ねていくと思いますが、いつかそんな相手と再会できたらいいなと思いますか。
いいですよね。僕はまだ高校生ですが、それでも中学生の頃の感覚がもうすでに少しずつ変わってきているんです。3年しか経っていないのに、当時感じていたことや考えていたことが少し遠くなっている気がする。だからこそ、何十年経っても覚えているような人や出来事があるというのは、とても素敵なことだと改めて思いました。
――この作品を通して、今を生きる中で何かを大切にしていこうという気持ちにもなりましたか。
大人になると、どうしても今やらなければいけないことが増えていくと思うんです。仕事だったり生活だったり、目の前のことに集中しなきゃいけなくなる。だから昔の思い出を大切にし続けるというのは、意外と難しいことなのかもしれません。でもこの作品を通して、「忘れなくていいんだ」「大切なままでいいんだ」と感じました。
僕自身も大人になったときに、今のことを振り返って「あの時間は素敵だったな」と素直に言える人でいたいなと思います。
――撮影当時は中学3年生だったとのことですが、劇中で演じた圭一とは年齢的にも近かったですよね。
そうなんです。図書館で勉強するシーンがあるのですが、僕自身も勉強するときは図書館に行っていましたから、すごく身近に感じられる役でした。MDを渡すシーンとか、イヤホンを貸すシーンとかは少し恥ずかしさもありましたけど(笑)、フレッシュな感覚って中学生ならではだと思うんです。だから圭一の気持ちは自然と理解できました。
――ご自身と重なる部分も多かったんですね。
女の子に対する気持ちだったり、距離感だったり、当時の僕も圭一と同じような感覚で演じていました。もちろん家庭環境など自分と違う部分もありましたが、感情の部分では近いところが多かったので、作り込むことなく役に入っていけました。
――圭一とご自身の違いを感じた部分は、どんなところでしたか?
好きな子に音楽を勧めることかな(笑)。僕だったら中学3年生の頃はできなかったと思います。「これ聴いてみて」と言うのはかなり勇気がいるなと。僕なら恥ずかしくなって、そのまま帰ってしまうと思います。
――公園で「キスしていい?」というセリフのシーンは緊張しましたか。
しました!(笑)。でも実はすごく楽しかったシーンでもあるんです。あの場面は、美咲との関係性が少し近づいてきたタイミングで、そのセリフを言った後に二人で笑い合う。あの空気感がすごく好きでした。
中学生らしい不器用さもあって、リアルなシーンになったと思います。
――ご自身も好きなものを人と共有するタイプですか。
めちゃくちゃします(笑)。僕はサッカーが好きなんですが、応援しているチームが勝ったらすぐ友達に連絡しますし、「最近何か楽しいことあった?」と人の話を聞くのも好きですし、自分の好きなものを共有するのも好きです。最近はSNSで面白い動画を見つけたら友達に送ったりしています。
――劇中では音楽を聴きながら勉強するシーンもありました。
それは本当にやっています(笑)。勉強を始めるとき、なかなかスイッチが入らないので、最初は音楽を聴きながらやることが多いです。集中してきたら音量を下げたり、歌詞のない曲に変えたりします。散歩するときも音楽を聴きますし、普段からイヤホンはよく使っています。
好きなものは全部しまっておく――岩田奏の“引き出し”の中身
――作品では、美咲の机の引き出しには“MD”が入っていました。もしご自身の引き出しに大切なものを入れるとしたら何を入れますか。
ぬいぐるみです。ポケモンのぬいぐるみをずっと持ち歩いているんです。現場や泊まりの仕事のときにも、お守りみたいな感覚で持っていきます。ホテルの部屋に置くと、自分の部屋みたいな感じがして落ち着くんです。
――何年くらい一緒にいるんですか。
最初の映画に出演した頃なので、中学1年生くらいからですね。気付いたら母が荷物に入れてくれていることもあります(笑)。
あと文房具も好きで、シャープペンシルを50本くらい持っています。機能の違いを調べたり集めたりするのが楽しくて。そういう好きなものが、自分の中の引き出しにどんどん増えていく感覚があります。
――最後に、作品を楽しみにしている方へメッセージをお願いします。
この作品は、自分の中にしまい込んでいる気持ちを持っている方、そしてそんな気持ちを素敵だなと感じている方に届いてほしいと思っています。つらかった記憶でも、大切な思い出でも、ずっと心の中に残っているものがあると思うんです。この映画は、そういう気持ちを「大切にしていていいんだよ」と優しく肯定してくれる作品です。観てくださった方それぞれが、自分の大切な記憶や誰かへの思いを改めて見つめ直すきっかけになったら嬉しいです。
-------------INFORMATION-------------
映画「ひとりたび」
2026年6月27日(土)~全国順次公開
■INTRODUCTION
30代女性の悩みを描く 失いかけた思い出と向き合う心のロードムービー
仕事に恋愛、人生に行き詰まった主人公が学生時代に経験した「初恋」の記憶を頼りに、自分の人生を見つめ直す。主演は、2003年にモデルとしてキャリアをスタートさせ、 主演作『茶飲友達』(23/外山文治監督)ほか、ドラマ・映画・CM・舞台 など多方面で活躍を広げる岡本玲。主人公と同年齢の役柄を等身大で演じている。監督は、初⻑編『左様なら』が全国 20 館以上で公開され、続く⻑編 2 作目となる『朝がくるとむなしくなる』では第 18 回大阪アジアン映画祭 インディ・フォーラム部門「JAPAN CUTS AWARD」を受賞、台湾・韓国で劇場公開されフランスにて約100館で公開された石橋夕帆。そして脚本に、『市子』(23/戸田彬弘監督)、自身で監督と脚本を務めた『三日月とネコ』(24)、『ザッケン !』(26)などで注目を浴びる上村奈帆が参加。
また、本作は2024年の釜山国際映画祭ジソク部門に正式出品された。主人公と同世代の3人が、将来への不安と過去の思い出の邂逅を繊細に紡いでいく。
■STORY
東京で働く主人公・美咲。10年間勤めていた会社に居づらくなり退職。将来が見えないまま実家に帰る。地元で開催された同窓会で初恋の相手が2年前に亡くなっていた事を知り、空っぽだった美咲の心が初恋の思い出で埋め尽くされていく……。
■CAST
岡本 玲
⻑村航希 坂ノ上 茜 岩田 奏 石山愛琉
日高七海 里内伽奈 中山求一郎 ⻑友郁真 / 濱田マリ
原 日出子 平田 満
■STAFF
監督:石橋夕帆
脚本:上村奈帆
撮影:関 瑠惟
照明:中田祐介
録音:坂元 就
美術:畠 智哉
スタイリスト:小宮山芽以
ヘアメイク:安藤メイ
助監督:中村幸貴
制作担当:小元咲貴子
編集:小笠原 風
音楽:山城ショウゴ
スチール:松井綾音
ビジュアルデザイン:東 かほり
宣伝:五味聖子
プロデューサー:田中佐知彦
主題歌:ん・フェニ「おもうたび」
作詞・作曲:ん・フェニ(ビクターエンタテインメント/CONNECTUNE)
配給:MomentumLabo.
製作:Ippo
©️Ippo
【岩田奏 -Kanata Iwata】
2008年11月22日生まれ、東京都出身。2023年公開の映画『雑魚どもよ、大志を抱け!』で本格的に俳優活動をスタートし、ドラマ『姪のメイ』やNHK連続テレビ小説『虎に翼』、映画『初級演技レッスン』などに出演し、注目を集めている。
取材・文:相原郁美




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